チュートリアル講演
第12回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)
「医用画像研究と一般画像研究におけるプライバシー保護」
第1日 7月29日(金) 13:10-16:00
講演 1:
人を対象とした研究を安心して進めるための処方箋
大西 正輝(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
[抄録]
人を対象とした研究は個人情報保護法といった法律遵守の問題やプライバシーといった権利の問題,炎上のリスクなどを抱えており年々研究を進めるための手続きが煩雑化している.
本講演では人を対象とした画像認識の研究を進める際に注意をしていることを事例を含めながら紹介する.
講演 2:
臨床現場における個人情報保護に留意した医療AI開発研究
大山 慎太郎(名古屋大学)
[抄録]
2013年のアベノミクスにおいて掲げた三本の矢の一つである成長戦略「日本再興戦略」において国民の健康寿命の延伸が掲げられた.さらに2018年の「統合イノベーション政策」戦略推進会議の「AI戦略2019」などを踏まえつつ策定された健康・医療戦略では,医療画像を活用した研究や産業化を支える基盤的施策として,データ利活用基盤の構築やデータ利活用人材の育成確保を促しており,国家的にも高い注力がなされている.
しかしながら医療AI研究やSaMD(Software as a Medical Device)開発といった研究・開発には企業と医療従事者・医療機関の緊密な連携に基づく大量の画像情報や非テキスト情報の個人情報保護に留意しながらの収集・管理(共有)・整理が必要となる.文科省では先の国家戦略に基づく先進的医療イノベーション人材養成事業を推進しており,名古屋大学は2020年に本事業の選定を受け「保険医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト(AI-MAILs)」拠点を構築し,医療データ活用における注意点を理解し,研究開発を企業と推進することができる医療人材,特に臨床医を養成している.本セッションでは,このような拠点教育の取り組みや拠点人材とのOJT研究開発の経験などをご紹介する.
講演 3:
医用画像の個人情報を取り扱う企業の取り組み
中西 隆伯(株式会社ジェイマックシステム)
[抄録]
医療システム開発の企業の立場から医用画像に含まれた個人情報が漏洩すると重大インシデントとなり,開発企業はもとよりシステムを使う施設の信用を大幅に低下させる可能性がある.弊社はPACS製品の開発が主力である.それら製品の重要な機能は,保存された医用画像の適切な表示や通信である.
開発の段階では,各種ベンダーが提供するダミーデータで試験を行うため個人情報を扱うことはない.しかし,施設に導入された製品において問題が発生した場合は,どうしても実データの解析が必要になる.その際には個人情報保護法に則って,個人情報を慎重に扱い対応を行っている.このように個人情報を取り扱う製品を開発する企業の立場から,解析の手順などを紹介する.
発表では,DICOMのタグに埋め込まれた個人情報を削除する方法についても触れ,DICOM Toolkitを用いて簡単に個人情報を仮名加工情報に変換する方法と,DICOM Toolkitを利用した変換アプリケーションを紹介する.